プラムのつぶやき…


【2020年 3月】 最もお店が賑わうのがギフトシーズンの3月です。ズボンのポケットから深いあめ色に育った携帯靴べらを見せてくれた方。お食い初めセットを贈ったらとても喜ばれたと伝えてくれたお客様。お買物の合間に嬉しいギフトを頂きました。しかも利き腕を傷めてしまい、急遽、お名入れサービスがレーザー加工での対応となったのですが、皆様ご理解を頂きました。コロナウイルスの影響もあるなか、ご来店のお客様には格別の感謝の思いがありました。ありがとうございます。  否応なしにウイルスについて考える日々です。ウイルスや微生物の住む世界は常に存在していて、赤ちゃんを育てる胎盤もあるウイルスに守られていると近年の研究で分かったとのことです。日頃目に見える世界にとらわれがちですが、狭い知識ながら精一杯の想像力を働かせ思うことは、やはり、身近な自然、人を、今日を大切に生きたいということでした。    杉浦

【2020年 2月】 オノオレカンバのゆりかごである宮古地方は、私にとっても大切な場所です。先日も、みやこ市民劇に寄せていただき、その熱演が胸に残ります。明治2年の宮古港海戦から150年の記念事業とのことです。戊辰戦争からの流れを受け、旧幕府軍、対する新政府軍どちらも受け入れ、燃料(炭)や水の補給、船員の休養のために宿を提供した当時の混乱・賑わいが見事に表現されていました。多くの悲しみや苦労を胸にしまい込み、明るく力強く生き抜いてきた浜の人々の生きざまが今につながっているのだと感じました。  県立水産科学館に、天然の昆布を巻き取る古い漁具が展示されていました。素材はオノオレカンバ(アンチャ)で、地元では「めん棒」と呼ばれていたと館員の宇都宮さんが教えてくれました。飢饉のときも保存食として重宝したという海藻類。舞台で復活した陽気な「大漁踊り」を思い出しながら、感謝していただきたいと思います。    杉浦

【2020年 1月】 弊社のスタッフ菊池治さんが二戸市市民栄誉賞を受賞し喜ばしい思いで新年を迎えています。昨年11月、茨城国体弓道競技で岩手県成年男子優勝の余韻に浸っていたころ、岩手町に東北初の弓師が誕生していました。京都の御弓師匠柴田勘十郎さんに弟子入りし5年の修業を経て弓工房を開いた杣友介さん(25)です。柴田勘十郎さんと言えば、伊勢神宮に「梓御弓」を奉納する21代目。オノオレカンバで作られた弓を「梓弓」と呼ぶという研究があり、ずっと注目していた方でしたので驚きとともに気持ちが高ぶりました。  思えば「手の内を明かす」「~な筈」何気なく使っている言葉ですが弓矢に由来します。また、京アニで製作された「ツルネ」も改めて観てみると、細かな描写に思わず引き込まれました。インバウンドの対応と同時に、日本人としてのルーツも大切にしたいと感じます。プラム工芸も創業40周年を迎え、感謝とともに未知の世界へ踏み出します。    杉浦

【2019年 12月】 茨城国体で弊社のスタッフが弓道競技で優勝させていただいたご縁で、水戸の方とお話をする機会がありました。意外にも、東北のモノ作りが好きで何度も東北を訪ねてくださっているのだそうです。なんとも嬉しく長電話になってしまいました。岩手の北の端に住んでいる自分にとって、関東から西の国々は文化の薫り高い憧れの場所です。遠くからしっかりと北の地を見てくださっている!頑張らなくては!また勇気をいただきました。  ひとつの品物に隠れたストーリーこそが、お客様の知りたいこと…。「ガイド向上セミナー」で、東北食べる通信編集長、京都出身の成影沙希さんから伺った言葉を思い出します。まずはご注文くださる方の幸せを願い、我らが愛する岩手が育てたオノオレカンバのストーリーをお届けできる幸せを噛みしめています。   杉浦

【2019年 11月】 相馬大作・九戸政実が活躍するずっと以前、中央政権大和朝廷との38年戦争に終止符を打ったのが、蝦夷の英雄「伊加古」。今年の二戸市民文士劇も好評のうちに幕を閉じました。中央の人々に対し内心ひるんでしまう自分のルーツを見た気がし、舞台上の「伊加古」に魂が乗り移ったと感じる最高の時間となりました。宮古市民劇からもご参加いただき、2月の公演には二戸からも参加予定で、交流が続いていることをうれしく思っています。  11月初旬、KOGEI EXPO IN IWATEがアピオで開催され、会場には播州そろばんのブースもあり興味深く拝見しました。そろばんの玉の素材について尋ねると「100%岩手県宮古市産です!」とのこと。思いがけず、今でも岩手で育った「オノオレカンバ」が変わらず活躍していることを知り、紛れもなく岩手が誇るすばらしい樹木であることを確信したのです。   杉浦

【2019年 10月】 今月初めの茨城国体にて、弓道近的成年男子岩手チームが見事初優勝を飾りました!その一人が菊池治さん。わが社の製作スタッフなのです。「緊張で膝が笑いました」と言いながら祝勝会で満面の笑みを見せてくれました。その茨城でも、台風19号により甚大な被害を受けました。台風15号の爪痕も癒えないまま、岩手県を含み、全国でもその被害は拡大しています。被害に見舞われた皆様心よりお見舞い申し上げます。深いところで心に傷を負った方もおられるでしょう。何らかの形で安らぎの時が訪れますよう、切に祈っております。  『平安時代、雷が鳴ると弓の弦を弾いて大きな弦音を響かせていた。「梓弓」の持つ魔よけの力を信じていたことの一つのエピソードです』五角箸の手作り体験に参加された高校の国語の先生からの教えに祈りを重ねたい思いがいたします。   杉浦

【2019年 9月】 令和元年9月10日、千葉県に大きな被害をもたらした台風15号。未だにその被害の全容すら把握できないといいます一日も早い復旧をと願うばかりです。  地球温暖化という言葉を知った頃のCMでしたか「砂浜ってなに?」と問いかける子供の声を覚えています。さらに温暖化による気象災害の深刻化が現実のものになっているという専門家の言葉も気になります。私たちにもできることがあるはずです。他人事と思わず、日々の暮らしぶりから見直したいと強く思います。  久しぶりに代表の込山が取材を受ける機会がありました。デザインのこだわりは?という問いに「手になじむやわらかな曲線です。究極の憧れは、ひらがなの流れるような美しさですね」との答えでした。なるほど込山の描く文字は、おおらかでふくよか。納得です。人としてもそんな生き方を目指したいと思う長月です。   杉浦

【2019年 8月】 大船渡高校の佐々木朗希選手。第101回全国高校野球選手権岩手大会4回戦終了後の涙が胸に残っています。その評論は、公私にたがわず枚挙にいとまがありません。しかし、そんな外野の騒ぎとは別のところで、震災や家族のこと、もちろん仲間のこと、私の想像を超えるたくさんの思いがあったことと想いを巡らせています。そして「初完封勝利!96球マダックス達成!」マリナーズの菊池雄星投手が最高の結果を残しました。二人とも最愛のお父様が、天国から見守っていることでしょう。岩手が生んだ希望の星たち。私たちもこれからの活躍を信じ、どんな時も応援していきたいと思います。  今年も中学生が職場体験に来てくれました。さらに、町で合った生徒が「プラム工芸の…」と私に声をかけてきました。1年生の見学会で合ったことを覚えていてくれたのです。喜びとともに背筋が伸びました。愛しい子供たちが見てくれているのですね!   杉浦

【2019年 7月】 銀河鉄道観光さんの企画旅「癒しと美のリトリート」のゲストをお迎えし、マッサージ棒作りを行いました。様々な形の素材の中から自分に合ったものを選び、サンドペーパーで磨き、オイルで仕上げます。オノオレカンバ特有のツルツルの仕上がりに「ずっと触っていたい~」と、皆さん素晴らしい出来栄えでした。なかには弊社製品をご愛用の方もおられ感激の出会いも待っていました。二戸まで来ていただき、ありがとうございました!  フードスタイリスト野口英世さんの紹介で、文化出版局の「ミセス7月号」に斧折樺のターナーと五角菜箸が掲載されました「五角箸は使ってるけど、菜箸は知らなかった」とわざわざご連絡をくださる方もおられ、情報発信の大切さを感じた7月となりました。これから40名様ほどの体験予約をいただいております。より良い時間となりますよう準備してお待ち申し上げます。   杉浦

【2019年 6月】 歌川広重の企画展(岩手県立美術館)テレビなどで知ってはいても、実物は全く異なり、不勉強な私にその魅力を明確に示してくれました。『東海道五十三次』私も訪れた京都までの道のりだけれど新幹線という早馬では分かるはずもなく―。急な雨に腰をかがめる後ろ姿、大きな月と白く光る道を急ぐ家族連れ…「もうすぐ宿ですね!」つい話しかけそうになるのです。さらに、強く印象に残っているのが「名所江戸百景」からの特別出品の10点。有名な「大はしあたけの夕立」、雨を描いた線の一筋一筋に説得力があり、ゴッホやモネに影響を与えた圧巻の描写力を見せつけられたのでした。  現代の私たちも、刻一刻と変わる空の色や愛おしい人々の暮らしを大切にしたいと思います。工房前のオノオレカンバの葉が生き生きと茂りました…。   杉浦

【2019年 5月】 四月は久々に積雪があり、今年は30度超えの日が続いています。ここ数年竹細工の材料となるスズタケが不作で、さらに120年ぶりと言われる開花が話題となっています。自然の大きな波を感じ、言い知れぬ不安が心に忍び寄ります。それでも工房には、記念品のご依頼が続き、5月は特に北海道や九州からのご注文が多く感謝しているところです。  今年は「新選組」の土方歳三没後150年にあたり、生誕の地である東京日野市で「ひの新選組まつり」が開催されました。ゆかりの地のひとつである岩手県宮古市「海戦組」から、浄土ヶ浜旅館の山根千春さんが招かれ、詩吟から始まる「海戦の詩」を披露する勇姿を見ることができました。復興半ばの三陸を、全国の被災地を応援していきたいと思います。   杉浦

【2019年 4月】 震災ですべての灯りを失った夜、降るような星空が人々を包み、大切な人が空から見てくれているような感覚だったと報道で知りました。先日ブラックホールの映像を初めて目にし、自分の存在の小ささを思い知るほかありません。けれども星であり、月であり、風であり。自然そのものが癒しであることは確かです。しかし私たちは夜の闇を失いました。しかも高々数千年の人史によって―。未来をどう生きるのか、答えがそこにあると感じます。  赤ちゃんが生まれたのでと、離乳食スプーンのご注文をいただきました。3年前、緑風荘でプロポーズを計画し、サプライズで名前入り五角箸をお届けしたK様です。来訪いただいたときの写真とスプーンを手にした可愛らしい赤ちゃんの写真も届きました。尊い命の誕生に触れ、スタッフの表情もつい緩んでしまいます。この世の素晴らしさを守り伝える大人になりたいものです。   杉浦

【2019年 3月】 震災で奥様を失い、男で一つで息子さんを育て巣立ってゆくまでの日々を報道番組で見ました。本音が言えず二人とも苦しんでいて、それでもそれはお互いを思いやるからこそ。あれから8年の月日が流れても、こんなにも切ないのかとその影響の一端を思い知らされました。3月は人も動き、心も動きます。私たちの小さな工房にもご来店頂くほか、オンラインショップやお電話で多くの贈り物のご注文が入り、自分がもらって気に入ったからと心温まるエピソードにふっと和ませていただきます。  誰かを思うことで前を向ける、強くなる。3.21大リーグデビューを飾った我らが菊池雄星。東北をかたどった刺繍を施したグラブを携え、東北への熱い思いを胸に活躍してくれると信じています。旅立つ若者へエールよ届け!   杉浦

【2019年 2月】 “居場所のない者、悩める者、弱き者、名もなき者”に捧げる…。この言葉が、私の中に刺さりました。<クイーン>のボーカル、フレディ・マーキュリーの物語、映画「ボヘミアンラプソディー」の序説の一文。彼、彼等の人生を知ることで、勇気づけられる人が一人でも多くいてほしいと願います。子供たちが被害にあう痛ましいニュースが飛び交い、同時に生きることに息苦しさを抱えている大人も多くいます。未来そのものである子供たちを守れる大人でありたい、誰でも自分らしく生きることができる世の中をどう目指せばよいのか。  お食い初めセット「花あづさ」をご友人にとご利用いただいたお客様から嬉しいメールが届きました。『5歳になる息子が愛用中です。5年以上も使い続けられる出産祝いは聞いたことがなく、その価値を実感し、出産祝いにして喜んでもらいました。』やはり、日々愛をもって生きるしかない?フレディ?   杉浦

【2019年 1月】 東日本大震災当時、中学生だった子供たちが成人式を迎えたというニュースが心に留まりました。その晴れやかな姿は希望そのもの。彼らは、生きる上で大切なことは何かを知っていると思うからです。「森は海の恋人」運動で知られる畠山重篤さんも「津波で死んだように見えた海に、数か月後には植物プランクトンが戻った。それは森が生きていたからだと語っていました。自然を守り活かすことの大切さを海や森が教えてくれると。岩手の森で育ったオノオレカンバは、昔は弓や艪などに、今では赤ん坊や大切な方への贈り物にと、ご利用いただきます。  日本各地で自然災害が続いた昨年でしたが、私たちの小さな活動が未来を生きる若者たちへの一筋の光になればと願う平成最後の新年です。   杉浦

【2018年 12月】 清水寺から成就院に続く池のほとり、思わず立ち止まりました。灯りに浮かび上がるもみじ葉が黒く透き通る池の水面に映り、あまりの美しさに吸い込まれる感覚を覚え足がすくみました。風のない月夜には、神代の人々も同じように心奪われたのではと感慨に浸りました。一方、地震や豪雨、台風など多くの自然災害にも見舞われ、人であることの哀しさを思います。自然は流れるようにその営みを繰り返しています。砂粒よりも小さな存在の私は、どんなふうに心を整えればいいのでしょう。答えが見つかりません。  嬉しいこともありました。昨年贈り物にご利用いただいた北上市の男性から「子供が生まれたので、お食い初めセットをください」と喜びに満ちたメールが届き、人であることの幸せをかみしめることができました。新しい命に心からの祝福を贈ります。   杉浦

【2018年 11月】 エンゼルスの大谷翔平選手が新人王に。西部の菊池雄星投手がメジャーに挑戦。地元二戸の福岡工業高校弓道部女子二人が福井国体で1位となり、岩手47年ぶりの快挙と号外に沸きました。自分の夢に向かい必死に取り組むその姿には、ファンならずとも心が大きく動かされます。  浄法寺の漆の共進会を見学するため遠方から訪れた数組が、五角箸手作り体験に参加され『手仕事の盛んなこの地域を大切にしたい』と有難いメッセージをいただきました。そして先日第九回「二戸の手仕事展」が開催され、やはり各地からお客様が大勢来られお求めいただきました。岩手で斧折樺(オノオレカンバ)という木に出会い、その唯一無二の魅力を一人でも多くの方に伝えていきたいと思っています。それがプラム工芸の夢であり、使命なのだと教えられる日々に感謝です。   杉浦

【2018年 10月】 工房のメイプルが、黄緑色から褐色に見事なグラデーションを見せてくれています。スイス人のゲオルグ神父が、生前ふるさとから持ち帰った種を引き継いでいます。高い空を眺めていると、神父様の青い瞳を思い出します。先日上演された二戸市民文士劇「九戸城と女たち」。英語教師として活躍中の米国人アダム・フィンクさんが「南部晴政」を好演し話題となっています。小さなこの町を、日本を愛してくれる青い瞳の友人たちに深い学びを与えられます。  十三夜の月見が行われた縄文のうずまき社では、文士劇は三年目という関東の若い女性に出会いました。南部史、江戸史などを研究している方で、「晴政の娘は五人いましたが、女性の視点で書かれた演目は貴重ですね」と感慨深げに語っておられました。月を愛でつつ、私も書物を開いてみようかしら…。   杉浦

【2018年 9月】 高校の先生方22名を箸づくり体験にお迎えし、オノオレカンバで作られた弓は「梓弓」と呼ばれ特別な存在だったことをお話しました。すると「梓弓」の弦を棒でたたきながら占いをするイタコさんの映像を、大学の研究室で見たことがあると感慨深げに話された先生がおられました。長野で多く作られた梓弓ですが、この北の地まで文化が伝えられていたことをまた実感することができました。  翌日には高校生が来てくれました。研究発表のために「箸」について掘り下げるのだそうです。彼女は五角箸を作りながら、地元の漆や歴史文化について学んだことを、真剣に話してくれました。地元愛あふれる美しい瞳に触れ、励まされる思いでした。震災から7年。特別な想いを抱きつつ大人になってゆくこの子達こそが、時代の道しるべになると劣等性であった私は確信したのでした。   杉浦

【2018年 8月】 今年はまさかの猛暑日を含む厳しい夏となりました。そんな中暑さを忘れさせてくれたのが、秋田の金足農業高校。 「雑草軍団」の活躍は、東北人の心の奥にある魂を目覚めさせてくれたように思います!そして、岩手にも紹介したい熱い1冊があります。岩手の月刊情報誌「AREAi」=エリアアイが創刊1周年を迎えました。岩手の衣食住、文化を丁寧に取材し魅力的な写真で紹介する保存版です。巻末には岩手発の逸品プレゼント企画もあり、弊社でも毎号提供しています。全巻10冊ご覧いただけますので、お気軽にご来店くださいませ。
 『九戸政実の乱』が終結の時を迎えた秋がまたやってきます。今年の二戸市民文士劇は「九戸城と女たち」。戦いの陰で支えた女性たちの視点を通し、この歴史がさらに身近になるのではと期待が高まります。   杉浦

【2018年 7月】 一戸町から年長児、小学1年生合わせて32名の子供たちが、五角箸手作り体験に来てくれました。栗の木と人との関わりを話題にすると、「じょうもんじだ~い」とか「まくらぎ」と言葉が飛び出し、真剣な表情と的確な反応に大変驚きました。一戸には世界遺産登録を目指す「御所野縄文遺跡」があり、彼らは縄文文化に親しんでいたのです。もちろん斧折樺にも興味津々。「おも~い!ツルツルだね~!」とキラキラした瞳に囲まれ幸せな時間となりました。
 長年ご進物にお使いいただいているお客様から注文があり、『贈り物は、自分の心地よさのお裾分けです』と、一言添えてくださいました。心に灯りがともり、言葉の持つ力をしみじみと感じました。言葉を持った私たち、便利な時代にあっても、想いを伝える心配りを大切にしたいものです。子供たちに恥ずかしくないようにね…。   杉浦


【2018年 6月】 一戸町から年長児、小学1年生合わせて32名の子供たちが、五角箸手作り体験に来てくれました。栗の木と人との関わりを話題にすると、「じょうもんじだ~い」とか「まくらぎ」と言葉が飛び出し、真剣な表情と的確な反応に大変驚きました。一戸には世界遺産登録を目指す「御所野縄文遺跡」があり、彼らは縄文文化に親しんでいたのです。もちろん斧折樺にも興味津々。「おも~い!ツルツルだね~!」とキラキラした瞳に囲まれ幸せな時間となりました。
 長年ご進物にお使いいただいているお客様から注文があり、『贈り物は、自分の心地よさのお裾分けです』と、一言添えてくださいました。心に灯りがともり、言葉の持つ力をしみじみと感じました。言葉を持った私たち、便利な時代にあっても、想いを伝える心配りを大切にしたいものです。子供たちに恥ずかしくないようにね…。   杉浦


【2018年 5月】 風薫る五月、念願だった福島の大内宿を訪ね、下野街道を行く日光への旅路。二戸に立ち寄った吉田松陰や我らが相馬大作らの目にも映ったであろうその景色を味わいつつ…。日光東照宮に到着すると、霧雨に濡れた美しい陽明門が現れました。浄法寺の漆が修復に使われていると思うと、いとおしさもまた格別です。
 フェザンの販売会で出会った若いカップルから、結婚の記念に、斧折樺(オノオレカンバ)の表札とカトラリーセットをそれぞれのご両親にと、ご注文いただきました。幸せそうな二人の笑顔が忘れられません。そして、身近なところでも二人、三人と赤ちゃんが誕生しています。様々な縁を結び、光の世界へやってきた命を心から祝福します。様々な時代を越え、太古から続く命のリレー。命を支える、お父さんお母さんそしてご家族の穏やかな日々を、若い人たちの幸せな未来を、小さな工房から祈っております。   杉浦


【2018年 4月】 川沿いの柳が芽を吹き、桜が満開になり北の春は物凄いスピードで色づきます。縄文のうずまき社でもオープン行事が行われ、サバの出汁のひっつみに、持ち寄った野菜たっぷりのお惣菜が彩を添え、豊かな食卓を囲みました。集まった愛らしい子供たちを見つめながら、豊かな未来を残してあげたいと思うのです。
 また、オーストラリアからの東北へのツアーの仲介をしている方が来られ「本当の日本の文化を紹介したい」と熱く語っていました。日本通のオーストラリア人に「トンカツを食べているのにどうして長寿なの?」と聞かれ愕然としたというのです。「北東北は、縄文時代から続く貴重な文化が今も暮らしの中で息づいている。食は愛なんです!」と切々と訴える青年に、背中に強く押された気がしています。日々の暮らしを丁寧に過ごしたいですね。まずは、できるところから…。   杉浦


【2018年 3月】 本当に苦しい時は辛いって言える訳がない。前を向いて笑うしかない。震災から7年たっても苦しみが続いているのだと言葉を失う。そんな中、避難指示が解除されたばかりの福島県浪江町へ戻った若者たちがいると報道で知った。帰還率はまだ数パーセント。周りの年配者が大丈夫かと声をかけるが、「帰りたい」という思いしかなかったと即座に答えていた。その澄んだ眼差しは、画面から飛び出した私の心に刺さった。こんな真っ直ぐな瞳を知っている気がした。そうだ、幕末の志士たちだ。こんな人たちが説明のつかない、けれど見えない真実の力に押されるように、歴史を動かして行くのだと思った。
 失敗や過ちの経験こそが最も優れた師となる。私たちはどこに向かうべきなのか。人も木々も虫も春を待っている、はるか遠い、本当の春を信じてともに生きて行こう。   杉浦


【2018年 2月】 第1回宮古市民劇。満員の観衆の一人として貴重な時間を得ました。相次ぐ飢饉から人々を救うため、道の開拓に半生をささげた鞭牛(べんぎゅう)和尚の実話がテーマ。崖の続く険しい岩盤を掘り進めるという無謀とも言うべき愛と挑戦の物語でした。尊い先人の働きがここにもありました。久慈から宮古へ向かう往路、宮古から盛岡へ向かう復路はまさに、建設中の三陸復興道路、そして盛岡に伸びる横断道です。極寒の2月、作業を進める姿を見つめていると、鞭牛和尚の温かな眼差しと重なった瞬間があり、私の濁った瞳も涙に洗われたのでした。
 東日本大震災から7年が経とうとしていますが、まだ復興の道のり半ば。「命の道」を開拓してくれた鞭牛和尚のご加護がきっとあることでしょう。二戸からも思いを重ねます。   杉浦


【2018年 1月】 以前に、心のつまづきで声が迷子になった女性と出会いました。そして、4年ほどかかって会話を楽しめるようになったとの連絡をいただき、胸の奥の霧が晴れるようでした。
 仕事もできず、失った時間もあったと思いますが、むしろ、失ったことでしか得られない、目に見えない贈り物を受け取っているのではないかと感じます。失ったものが大きいほど豊かな…。それは経験した方にしかわからない尊く気高く、強くて優しい特別な何か…。お店で出会ったお客様ですが、自分の一部となって人生を共有できる喜びは尽きません。温かく輝く人生を祈ります。
 オノオレカンバがご縁で思いがけない出会いがあります。昔は呪術師の道具にもなったオノオレカンバ。時代は変わっても、人を引き付ける何かを持っているのでしょうか。   杉浦


【2017年 12月】 先月、浄法寺町にある天台寺での改修工事の見学会に参加し、棟板4枚家族分を寄進し『すべての命が輝く世界になりますように』と願いを刻みました。天台宗を導き平安を説いた賢人、死にゆく人に光を届けたマザーテレサ。日本の洗濯を訴えた坂本龍馬。世の平和を願いつつも、私たちはあまりにも力がありません。国際社会のもめごとや悲しい事件を耳にするたび、そのボリュームに押しつぶされそうです。メディアが発達する前の先人たちは、今日の暮らしを守るためよく働き、身近な人を愛し、尽くした人生であったろうと、ふと思います。私もやはり身近な人に、愛していると伝えなくてはと気づくのです。家庭でも、職場でも、地域でも…。日々の暮らしこそが尊いのだと。
 この冬は、甘酒を使った本格的な「がっくら漬け」の挑戦をしました。友人のお母様の指南で、私としては上々の仕上がりです。感謝。穏やかな新年が迎えられますように。   杉浦


【2017年 11月】 まだ明るさの残る空に十三夜の月を待ち、縄文のうずまき社の縁側で見知らぬ方々と肩を寄せ合いました。葉を落とした山上の木立つ越しに光が見えると、ワーッという歓声が沸きました。忙しい毎日ですが、心洗われる清らかなひと時です。その帰り道、やっぱり私は、優しさのギアが上がるのを感じるのです。
 暮しの手帖の通販では、靴べらに続き孫の手の取り扱いが始まりました。そして、ホテルメトロポリタン盛岡ニューウィングのクリスマスツリーを飾るオーナメントの製作依頼がありました。我らが200個のオーナメントたち、照れながらも誇らしく輝いてくれると思います。今回は台風被害のあった岩泉から、縁あって樹齢20年の若木が届きました。20年たってやっと6センチほどになります。養分の少ない崖でゆっくり育つこの木が、皆様の心にきっと特別な贈り物を残してくれるという予感に包まれ心が躍ります。   杉浦


【2017年 10月】 市民文士劇「相馬大作物語」は、千人の観客とともに千秋楽を迎え、その興奮を胸に色づく山々を見つめています…。そんな中、天才てれびくんの放送を見た古くからのお客様や百貨店のスタッフさんから「本当に大変な加工なんですね!知りませんでした。」と電話やメールをいただきました。現場の大変さを言葉で伝えることはとても難しいです。
 カタライズデザインの山下さんと共に考案した、斧折樺の引き手とスイッチプレートを使ったデザイン住宅が花巻、盛岡に次々と完成しています。その見学会で、県森連や岩井沢工務所の方々と出会いました。「アサダは、きめ細かく色もきれい。オニグルミは目が詰まっていて落ち着いた雰囲気。アンチャ(斧折樺)の床柱はスゴイ存在感だ。」岩手の魅力的な木々を建材として活かしていこうと、その思いを熱く語っておられ、私も時間を忘れ幸せなひと時を過ごしました。若かりし頃の代表込山が抱いた夢を、若者たちが引き継いでいくと感じることができたすばらしい出会いとなりました。   杉浦


【2017年 9月】 盛岡駅ビルフェザン「岩手のモノづくり販売会」での一コマ。「あ~。これこれ!入院中の友人がリハビリ頑張ってます!岩手にもいいものがあるんですね」と話しかけてくださり、お医者様が「長い靴べらを使って、まずは自分で靴を履くことから始めましょう」と話されたとのことです。確かに70cmのくつべらセットは立ったまま楽に靴が履けるバリアフリーのデザインです。偶然にも『暮らしの手帳』の通販で、新たに取り扱いが始まります。10月からお取り寄せ可能になると思います。『グリーンショップ』限定の65cmサイズ、よろしければのぞいてみてくださいね。
 ついに9月5日、工房に取材が入った『天才てれびくんYou』が放送されました。ご覧いただきありがとうございました。あの堅い「オノオレカンバ」を1日かかりで肩たたきに仕上げた泰世君、寧々ちゃんの頑張りには本当に感心しました!   杉浦


【2017年 8月】 小学校、中学校の先生方の研修、そして中学生の体験実習の受け入れが続き、斧折樺についてお伝えしました。「岩手にこんな素晴らしい木があることを知りませんでした」という感想が多く、私たちの努力不足を実感しました。また大分県からも小学校の先生方が来られ、この木の持つ歴史などに触れ、感心しきりの様子でした。帰りには斧折樺の端材を購入いただき「子供たちに触れさせるのが楽しみです!」と笑顔で帰られました。先生は「東北の森は明るくていいですね。大分では照葉樹が多く森が暗いんです」とも話されました。自然のあり様を体で受け止め、子供たちに還元している姿に触れ、しばらく余韻に浸りました。自然の中でしか生きられない私たち。謙虚に学び心豊かに暮らしたいものです。先日、NHKのテレビ番組「天才テレビくんYOU」の取材が入りました。テレビ戦士の斧折樺との格闘ぶりは必見。9月初めの放送が楽しみです。   杉浦

【2017年 7月】 縄文のうずまき社で行われた「月の寺子屋」。稲作や暮らしの指針となった月暦、南部めくら暦、田山暦のこと。地球のゆりかごである宇宙とのつながりについて学びました。昔学校で習った理科や科学は、遠い世界のことのように感じていたのですが、今になって、私たちのいのちに係わる尊い営みの学びだったことに気づかされます。小さいお子さんと一緒のママも「いのちは海からやってきたと言われますが、赤ちゃんを包む羊水の成分は海水に近いことを知り、宇宙のリズムを取り入れて暮らしてみたい…」と話していました。難しい世の中ですが、素晴らしい命の営みを心から祝福できる大人でありたいと願います。
 先日関西の百貨店に「美術の教科書に載っている作品がほしい」と来場者がありました。うれしそうにターナーを選んだ男子中学生を見て、「驚いたよ~」と言う代表の込山も満面の笑顔でした。   杉浦


【2017年 6月】 「立ったまま履ける長いくつべら売ってますか?」。朝10時過ぎに電話があり、午後2時頃にご夫婦で来店いただきました。オノオレカンバのくつべら80cmセットをご購入いただき「これから父のところに寄ってプレゼントします!」と。聞けば散歩好きのお父様が、かがむのが大変になり家にこもりがちで心配していたとのこと。仙台からの道のりをまた帰っていかれました。元気でいてほしいという想いがきっと伝わることでしょう。
 父の日があった6月は、まごの手、くつべら、そしてやはり五角箸のご利用が多くありました。感謝申し上げます。
 戦後の復興期から身を粉にして働き、この時代を築いてきたお父様方…。どうぞいつまでもお元気で、先の見えないこれからを生きる若者たちの道しるべになっていただきたいと願います。感謝と尊敬を込めて。   杉浦


【2017年 5月】 念願だった福島の取引先を訪ねました。まずは郡山駅前の「ギャラリー観」さん。その常設コーナーに私どものスプーンやフォークがきれいに並んでいました。『作品を知り、作り手を知り、ゆっくりとお客様にその良さを伝えていきたい』と語る佐藤和宏さん。上質なセンスをまといつつも、暖かな人柄そのものが『観』さんの魅力なのだと実感しました。
 そして、会津坂下町の「IIE(イー)」さんへ。『3.11をひっくり返す』という思いを形にした代表の谷津拓郎さん。何度となくブログを見ていたので「は、初めまして」とぎこちない挨拶に(笑)。と次の瞬間、あのストールが目に入り釘付けに!会津木綿特有の強くて自然な風合い、美しい縞模様。顔に当ててみると、よくなじむのです…。会津の仮設住宅の居住者向けに、内職事業として設立した背景があります。一度途絶えてしまった手仕事の復活が、復興への確かな歩みと結びついていることに感銘を受けました。飯盛山から鶴ヶ城を望むあの丘に立ち、会津の歴史と心意気に酔いしれたのでした。   杉浦


【2017年 4月】 「御社のジャムスプーンやバターナイフ、『暮らしの手帳』の通販で扱っていましたか?」というお電話を頂き、ご注文を頂きました。前述のお取り寄せですと工房名の紹介が無いため、方々探してくださり感激の再会となりました。
 福島の会津木綿のIIE(イー)が出展する「東北エールマーケット」から、当方の赤ちゃんカトラリーセットをご購入のK様とのエピソードです。赤ちゃんのお名前を入れ、弊社から改めて発送したのですが「連絡もなく指定の期日の届かなかった」とのご指摘でした。よくある遅延トラブルと言えばそれまでですが、「御社のために…」とご丁寧にメールを頂きやり取りをしているうちに、ある思いにいたりました。通販ではお客様方にお会いすることはかないませんが、目の前にお客様がいると感じて事をなすべきと、当たり前のことを続ける難しさと大切さを考える機会を得たことを御礼申し上げた4月となりました。お客様の幸せを願いつつ…。   杉浦


【2017年 3月】 岩手、宮城、そして福島…。あの大震災から丸6年を迎えても、町の復興はまだまだです。今も続く仮設住宅での暮らし、失った町の再生、福島の方々の深い苦しみ…。決して忘れていないと思っているけれど、傷ついたその心に何も届けられない現実にやりきれなさを感じます。特にも福島の負った痛みを自分の痛みとしてとらえる自分、社会の実現を目指したいと思うのです。人は、まぎれもなく自然の一部です。大きな自然の営みを前に謙虚に、物事をとらえたいと切に願います。
 今日も工房に、五角ばしの修理品が届きました。「お箸の病院に行ってくるよ…と子供に説明しました」とメッセージが添えられていました。お子様にもお箸にも丁寧に接してくださるお母様の愛情が伝わり胸が熱くなりました。3年、5年、10年とお客様の元で働いた箸の里帰りです。汚れと傷みを手入れし、愛しいご主人の元へ舞い戻ります。   杉浦


【2017年 2月】 宮沢賢治の故郷で知られる花巻に、斧折樺が結んだ3つのご縁…。斧折樺の取っ手を使用した店舗兼住宅が完成しました。温かな白を基調とした内装に透明感のある木肌が映え、山下さん「カタライズデザイン」のセンスが光る上質な仕上がりです。そして「いわてスターブランド」の茂庭さんは、クラフトや食品を厳選したセレクトショップを運営。モノづくりの世界をまっすぐに見つめてくれる若者たちです。さらに、20日に再開を果たしたマルカンデパートの1階に「5th SEASON」がオープンし、可愛い雑貨が並んでいます。
 岩手びととして地元に誇りを持つ若い芽が育っていることを身近に感じます。県外から加わった光が混ざり合い、どんな明日につながるのか楽しみです。二戸でもついに市民文士劇「相馬大作物語」が上演されました。ここでも若い瞳がまぶしい輝きを放っていました。
 ともに元気な岩手、二戸を発信していきましょう。   杉浦


【2017年 1月】 地元二戸で震災の年から始まったニコエコの活動。代表の麻美さんがご結婚され、二戸を離れることになりました。浴衣の再生お洋服、体喜ぶランチ、やさしいヨガ、そして福島などの被災地支援…。小さいけれどほんわか居心地の良い集まりでした。寂しくなるけれど、ニコエコの風が運んだ小さな種が芽を出し、育ちつつあります。弱くて小さな存在でも、だからこそ本物の強さを持っていることを教えてもらえたと感じます。ありがとう、お幸せに!「愛が生まれるのは一人から~♪二人を超えてゆけ~♪」
 二戸市学校保健研究大会で桑田真澄氏の記念講演がありました。「夢をあきらめない」と題したお話は思いがけず強烈な挫折から始まり、しかもその挫折が「運が良かった。自分を知り、自分らしく努力することを学んだ」という言葉が印象的でした。小柄でも落ちこぼれでも、その特徴こそが夢への原動力なのだと素晴らしいエールをいただきました。   杉浦


【2016年 12月】 「二戸の手仕事展」。隣で出展していた80歳代の箒職人さんから貴重な学びがありました。「俺は若い頃、宮古の山で木伐りをしていた。親方に『やっておけよ』と一人残され、その辛さ、寒さに耐えかねて泣きながらやったもんだ…。」。私たちの作品を見ながら懐かしそうに話してくれました。
 オノオレカンバの丸太を山肌に並べ、その上を滑らせて木を運んだのだそうです。丈夫で滑りの良いオノオレカンバの特徴を活かし、力強く生き抜いた先人の働きが身近に感じられ、うれしい出会いとなりました。木とともにあった祖先の厳しい暮らし、今につながるその軌跡をしっかりと語り継いで行きたいものです。
 先日、三陸の幸を扱う東京のレストランに孫の手を150本納めました。社長さんがその使い心地を気に入ってくださったとのことで、木伐りのエピソードを添えさせていただきました。   杉浦


【2016年 11月】 10月は岩手国体、岩手大会がありました。二戸市でも剣道競技が行われ岩手県が総合優勝でした。我が工房のスタッフも弓道競技の初参加で6位入賞を果たしました。ある背景があり二戸は、剣道、弓道などの武道が盛んです。「相馬大作」という南部藩士が私塾を開設し、200人を超える門弟に、武術や思想などの教えを説いたことに由来するのだそうです。
 9月の九戸城古戦場まつりでも、本物の弓で無料の弓道体験会を行っています。子供から高齢の方まで長蛇の列ができる人気企画です。さらに流鏑馬競技も行われ、今年も大変な賑わいでした。2月の市民文士劇は【相馬大作】です。是非観覧にお越しください!相馬大作奉納弓道大会でワクワクした思い出がよみがえり、門弟の血がうっすらとでも流れていたらと想像の翼を広げてしまいます。   杉浦


【2016年 10月】 9月末、今年も縄文のうずまき社の田んぼは黄金色に輝き、感謝を持ってはせ掛け作業に加わりました。ぬかるんだ田んぼをひたすら往復…。でも、カサカサと稲の擦れあう音が心地良く、左腕に掛けた稲束の重みが結実のありがたさを教えてくれます。こうして自然乾燥したお米は、同じ品種でもぐんと味が良くなるのだそうです。昔の人はスゴイ!そう気付かされることばかりです。どうか人生の先輩方、後進の者たちに生きる知恵を授けてください。
 私たちの「斧折樺」も自然乾燥。3~5年も風に当てます。そんな【斧折樺】が結んでくれたご縁で、毎年紅葉の季節に来てくださる東京のYご夫妻。二戸の美味しいものはもちろん、帰る道すがら「福島のコシヒカリ玄米30キロ買えました~」と歓喜のメールが届きました。読みながら涙目になってしまいます。痛みを抱えた東北を愛してくださる、いとしいお客様のお幸せを祈ります。   杉浦


【2016年 9月】 「サプライズで五角箸を贈りたいので、名前を入れて金田一温泉『緑風荘』まで届けてほしい」と札幌の男性から依頼がありました。のちにカップルで工房を訪ねてくださり、「普段サプライズとかする人ではないので、とても感激しました!」と言葉を頂き、笑顔の素敵なその女性のうるんだ瞳に、私も胸が熱くなりました。「4月に結婚の予定で、これから久慈に焼き物の体験に行きます。『あまちゃんファンなので!』と弾むようなお声と、お相手のはにかみ笑いが印象に残っています。
 久慈、岩泉、宮古といえば、我らが「斧折樺」の故郷です。台風10号の被害に見舞われた皆様、1日も早い復興を祈ります。自然の恩恵を当たり前のように受けている日常に、改めて気づかされ感謝と畏怖の思いを強くしています。自然とともに生きる素晴らしさを学びつつ、一人でも多くの方と共有できればと願っています。   杉浦


【2016年 8月】 7月末、岩手県造形教育研究大会が行われゲストとして参加させていただきました。国内で、岩手の北上山系と長野の二つの分布帯を持つ【斧折樺】について紹介し、五角箸手作り体験も行いました。当方の作品が中学校の美術の教科書に掲載されていることもあり、先生方とこの木とともに歴史を刻んだ事実を振り返る機会となり、大変うれしく思っているところです。
 お隣の青森県立郷土館には「梓弓」の実物が展示してあります。岩手県宮古市の三浦魯櫂店では、津波ですべての材と道具を流されたのですが、2年前に再建し、漁具を作っているという70代の男性がテレビで紹介されでいました。
 【斧折樺】の特徴を活かし、経験と工夫を積み重ね、命がけで築いた暮らしを想像します。先人が残した知恵と技術、ある意味その歩みを引き継がせていただけたのだとしたら、至上の喜びと感じ入ります。   杉浦


【2016年 7月】 縄文のうずまき社の田んぼは農薬、化学肥料、除草剤を使わない「農」に挑戦中です。私も、うきうきと田んぼの草取り初体験!6月の晴れ間、さわやかな風に吹かれ15センチほどに育った稲の周りをゆっくり進む贅沢な時間を過ごしました。7月は霧雨の中、股下くらいまで育った稲の間を草取り…。深くかがめないので背中が痛くなりました。稲作や雑穀文化を守ってきた先人の労苦に感謝しつつ若い人たちに伝えたいと願います。
 しかし福島にはその希望を絶たれたままの地域があります。改めて失ったものの大きさを想います。その女性はテレビで「避難指示解除は出ても、自宅にあるものは汚染されてるから持っていけない…」と家族のアルバムを見つめていました。
 生まれ来る子供たちにこの状況を何と教えるのか、答えが見つかりません。この社会を作ってきた大人の一人として、考えて行動する責任を感じる深緑の季節です。   杉浦


【2016年 6月】 長身のお父様へ90cmの靴べらをと、大阪のお客様。腰も膝も痛いから、まっすぐ立ったまま靴が履けるようにと、父の日ギフトのご依頼です。電話のお声から息子さんのやさしい気持ちが感じられ、「靴を脱ぐときにもお使いいただけます」の言葉を添えてお届けしました。
 また、地元のお客様のは、法事のお返しに「スプーンうてな」をご利用いただきました。皆様の大切な方が、お健やかに過ごされますよう心から祈ります。
 感謝の想いを伝える方がいるということは幸せなことですね。一方、天上から自分を見てくれる家族もいます。それは、何よりも温かく穏やかな眼差し…。この目で見ることはできなくても、確かに存在していると思ってしまいます。五月雨の音に包まれ、愛しい人を想う素敵な季節です。   杉浦


【2016年 5月】 5月3日~5日、岩手県公会堂で「大日本市岩手博覧会」が行われ、参加させていただきました。予想をはるかに上回る1万8千人の方に来場いただき、主催者である中川政七商店さんも、岩手びとの工芸に対する感度の高さに感じ入っているようでした。私どもの売り場もお客様が途切れることなく、多くの方々に興味をもって見ていただき、感激の3日間でした。お越しいただいた皆様ありがとうございました!
 公会堂の入口にかけられた風情のあるのれんの先には、見たこともない工芸のテーマパークのような世界が広がっていました。中川政七商店創業300周年の祭典、次回は9月の長崎です。熊本・大分の復興状況が気がかりです。縄文の時代から幾度となく、震災、津波、噴火、寒波などの自然災害から復興してきた歴史を思い起こし、共にこの時代を生き抜く力にしたいと思います。   杉浦


【2016年 4月】 東北各地の桜は見事に咲き揃い、待ちに待った春を告げています。何かソワソワするのは、農耕民族の血のせいなのでしょうか。そんな中、女性騎手のみで行われる【桜流鏑馬=さくらやぶさめ】を見に十和田市へ行ってきました。満開の桜並木、約200mの鉄砲馬場を全力で駆け抜け弓を引く姿は、華やかで勇ましく心奪われるものでした。南部馬は卑弥呼の時代からの歴史ある特産物であり、まさに私達の祖先の暮らしと共にあった事を肌で感じる機会となりました。戦国の世でも、優秀な馬として認められていた事実は私たちの誇りです。
 この春、桜流鏑馬実行委員会は、「ふるさとイベント大賞」の大賞である「内閣総理大臣賞」受賞されています。この栄誉に力を頂き、9月に予定されている二戸市の「九戸城古戦場まつり」を盛り上げていきたいと考えているところです。   杉浦


【2016年 3月】 震災後プラムのクラフトをお届けし、ご縁が生まれた大切なお客様、いかがお過ごしかと思い出されます。あの日から丸5年、果てしない道のりに立ちすくむ思いがいたします。そんな中、被災地で設立された東北マハロファクトリーさんとのご縁がありました。
 斧折樺の五角ばしに三種類の言葉を入れて、東北復興ブランド「キラ・ウエア」から発売するというものです。その中で最も人気があったのが、「Poina'Ole」と印字した品でした。「ポイナ・オレ」、ハワイの言葉で「忘れない」を意味します。日本中からいただいた注文は、「忘れない」というエールにも感じました。この活動を通し、震災を忘れないでいてくれる方が一人でも増えるをしたら、工房の存在する意味もあるのかと学びの日々を過ごしています。全国の皆さんの柔らかい気持ちが、心を痛めている方へ届きますように!   杉浦


【2016年 2月】 もうすぐ東日本大震災から丸5年ですが、残念ながら記憶の風化も現実のようです。今でも仮設住宅にお住まいの方、やっと災害公営住宅に転居された方でも「あきらめ…仕方ない…」と、その気持ちを語り、復興への道のりの険しさを思い知らされます。しかし一方で希望もあります。
 福島で、会津木綿を中心に扱っている株式会社IIE(イー)さんは、「311をひっくり返す」という意味を込めて命名され元気に活動しています。東北マハロファクトリーさんは、福島、宮城、岩手の縫製工場などが力を合わせ、ハワイをテーマにした作品を提案しています。失ったものは大きくても、人と人の絆、命の尊さ、自分らしく生きることの大切さを学ぶ機会ととらえ、若者や幼い子供たちが、力強くそしてしなやかに希望の芽を育んでいます。今年になってこの2社との出会いがあり、共に活動させていただくことをうれしく思っています。   杉浦


【2016年 1月】 「お蔭様で結婚7年を迎えました」とのお手紙とともに五角ばしの修理品が届きました。当時結婚の願掛けにご購入いただいたとのこと。ありがたいことです。皆様の大切な場面に立ち合わせていただくことを、しっかりと覚えなければなりません。昔の人もこの木に願いをかけたという資料が残っています。時代は変わっても、日々の暮らしが何より尊いという学びの機会となりました。
 斧折樺は、被災地でもある北上山系に生育しています。この木を活かすことが私たちの使命だと改めて感じます。海と森の恵みを大切に育んできた先人に敬意を表し、正直なものづくりの道を進んで行きたいと思います。新しい年、皆様のお幸せを心よりお祈り申し上げます。   杉浦


【2015年 12月】 5年余り太陽の周りを回っていた探査機「あかつき」が、その軌跡を金星に移し、新たなステージに立った12月9日。そのスケールの大きさに、その技術と努力に、驚きと感動を持って報道に聞き入りました。地球の兄弟星と言われる金星に学ぶ、未来のための大切なプロジェクト…。しかし地球上では悲惨な争いごとが多すぎます。未来に向けて、すべての人々が手をつなぐそんな暁を見たいものです。今この瞬間にも生まれてくる大切な子供たちに、どんな色の空を見せることができるのか、心の霧が晴れることはありません。
 仮暮らしの友人は、どんな想いで空を見つめているのでしょうか。せめて「あかつき」の旅路が希望の光となって、私たちの星を照らしてくれることを願います。   杉浦


【2015年 11月】 5月に紹介したカタライズデザインの山下さんが、『家から始まる茶話会』を開催しています(盛岡)。いつか家を建てたいと思っていても、いきなりデザイナーに相談するのは気が引けます。そこで雑談の中で、小さな疑問を出し合い、参加者と共に考えていくという、ゆる~い集まりです。初参加の私は、家を建てる予定は無いのですが、「オール電化はどうして乾燥するの?」という、プロには聞きにくいことを話題にしてもらい、ひとつの納得を得たのでした。家族にとって大切な家、暮らし方を考える良い機会でした。
 11月3日小春日和の陽だまりで、工房前のラムズイヤーの枝にカマキリが卵を産みました。高さは50センチ。今年の雪は少なめでしょうか。5月に生まれた時には、8ミリ位の体でぴょんぴょん跳ね、忍者のようでした。いとしい命のリレーを見守りたいと思います。   杉浦


【2015年 10月】 居合道を学んでいる娘さんにと、斧折樺の木刀を購入されたお客様。ご兄弟へ、また取引先へとまごの手を-。赤ちゃんの幸せを願う『花あづさ』-。そして、贈り物人気ナンバーワンは五角ばし。「斧折樺」の強さに思いを重ね、大切な方へ気持ちを伝えたいというお話しをよく伺います。人を想う姿は、何より美しいですね。その想いが、未来の希望へとつながっていると信じたいです。
 緑があって、宮古市の秋祭りに参加しました。宮古港開港400年の今年、新撰組『土方歳三』ゆかりの地ということで、東京日野市、遠くは岡山の新撰組からの応援もあり、夜の街をパレードしました。前を進む「船山車」は、太鼓の勇壮な響きとともに、郷愁を誘う笛の音が美しく、心揺さぶられるものでした。三陸の人たちが守ってきた歴史の重さを受け止め。復興への歩みに寄り添って行きたいと強く思いました。   杉浦


【2015年 9月】 「90歳になる祖母にオノオレカンバのスプーンをあげたい…」と購入いただきました。9月はじめに親族でお祝いをしたそうです。『おばあちゃんはもちろん、息子や娘さんたちがとても喜んでくれたことが本当にうれしかった』と、わざわざお電話をいただきました。おばあちゃんを中心に、笑顔の花が咲いたことでしょう。愛情あふれるエピソードは、私たちにとっても何よりの励ましです。おばあちゃんのご健康と、皆様のお幸せを願います。
 6月のつぶやきで田植えを紹介しました。農薬や肥料を使わないという約束の田んぼですが、良く育ってくれたとのことです。私は、草の1本も抜かなかったので、食べる資格がなさそうです…。でも縄文のうずまき社のやさしいブログを読んでいると、許されている気持ちになるけれど、はたして?(笑)   杉浦


【2015年 8月】 秋の虫の声と共に、再会、出会いの夏も終わりが近づいてきました。この時期になると訪ねてくださるお客様の1年ぶりの笑顔、お子様の成長を拝見できる喜びの季節です。来年までお元気でと祈るばかりです。
 また、五角箸の手作り体験には、盛岡から23名の団体さんが参加くださり、ある方が、敷地の端の樹木を指し「ありゃあ、アンチャ(斧折樺の方言)だべ」と即座に言い当て驚きました。東京からは、新婚旅行のお二人が来店され、お互いに相手の箸を作りました。「サプライズ」とのことで、文字入れの内容は秘密?とほほえましい姿でした。
 8月はカップルの参加が多く仲睦まじい様子を見ていたら、私も、そばにいる大切な人に思いを伝えられているか、考えさせられました。   杉浦


【2015年 7月】 地元の高校3年生N君。「お蔭様で、リーダーシップ研修でニューヨークにいける事になりました。1年のころからものづくりやデザインに興味があると、よく訪ねてくれていたので、私たちにとっても喜ばしい事です。
 また今年もかわいい中学生たちが見学に、実習にと工房へ来てくれています。
 一番伝えたい事は、やはり命の大切さ。『「斧折樺」は、厳しい環境で生きる道を選び、その命をつないできました。人間も同じ。みんなの命も、何百年も前の人たちの命とつながっています。だから、自分や周りの人を大切にして、輝いてほしい』と。
 自分の未来をまっすぐ見つめる真剣な眼差しは、大人を動かします。彼らの未来、若者たちの未来を応援するプラム工芸でありたいと思います。   杉浦


【2015年 6月】 生まれてはじめて田植えを許されました。ぬかるんだ土に足を入れる瞬間。苗を植える時の柔らかな感触。縄文のうずまき社に集まったみなさんと過ごした贅沢な数時間。頬をなでる深緑の風に、ふと母の手の懐かしい記憶がよみがえりました。自然に抱かれている安堵感なのでしょうか。でも実際には足だけが抜けるので、長靴を引っ張りながらの移動はこっけいで、ちっとも絵になりません。必死なだけに爆笑ものです。心が満ち足りる一方、「農」を守るその苦労に、しみじみ頭が下がるのでした。
 水面に満月が映りこみ、白く揺らいでいました。帰宅途中の車窓から、どの田んぼにも月が次々と現れて絵画のようです。【田毎の月】という美しい言葉を学びました。そんな折、電話が入りました。次年度以降も、中学校の美術の教科書に当方の作品群が掲載されるとのことです。さあ背筋を伸ばし、ものづくりに励みましょう。   杉浦


【2015年 5月】 5月の雨に濡れた葉に藤の花が彩りを添え、心奪われる美しさでした。出勤途中の贅沢な出会いです。その瞬間「なぜ日本人は細やかな気質を持っているのか」という会話を思い出し、その答えを得た気がしました。春夏秋冬=二十四節気=七十二候、日本の自然を味わってきた祖先のまなざしに思いを馳せるのでした。
 その風土に寄り添い生み出してきた暮らしの知恵のひとつが、「住まい」。岩手の健やかな家のあり方について、本物を問い続ける『家と人』(発行人:加藤大志朗)という本があります。今回から、当方と交流のあるカタライズデザインの山下桂樹さんの連載が始まっています。私たちも注目です。良い刺激をもらいつつ、日々の暮らしに寄り添うプラムでありたいと思います。   杉浦


【2015年 4月】 「縄文のうずまき社」のオープニングイベントがあり、私も気持ちばかりのお手伝い。桜のほころぶ陽だまりのなか、初めて顔を合わせる方々と共に幸せな時間でした。特に「二戸民謡保存会中央会」の皆さんの歌や踊りがすばらしく、この空間に祖先の霊がともに喜び集まったような空気感でした。南部の人々に受け継がれてきた尊い文化が続いていきますようにと切に願います。
 私たちお手伝いスタッフも「紺色のうねりが」(作詞:宮崎駿、宮崎五朗 原案:宮沢賢治)を斉唱。映画『コクリコ坂から』の製作中にあの震災が起こり、図らずも被災地への思いを重ねる形になったという挿入歌です。―紺色のうねりが のみつくす日が来ても 水平線に君は没するなかれ― 私たち大人が、未来の子らのために正しい道を生きなければなりません。   杉浦

【2015年 3月】> 2月の、朝日新聞の『そばに置きたい』というコーナーでくつべらが紹介されました。記事の筆者は身長170cm以上ある70代の女性の方で「屈まずに靴を脱ぎ履きするには、くつべら80cmが必要」という内容でした。その後「腰やひざが痛くて、長いくつべらを探していた!」と思いがけず多く方からお問い合わせがありました。
 先日くつべらをお届けした福島県のお客様からお手紙が届きました。『4年前の震災で、実家の母や兄弟4人を一度に亡くしました。生きることが辛かった地獄のような日々を支えてくれた夫に、感謝の気持ちを伝えたかったんです。』ご主人もとても喜んでくださったとのことで、三陸の大地で数百年を生きた斧折樺の見えない力が、きっと伝わると期待しています。忘れられない大切な出会いでした。   杉浦


【2015年 2月】 あの津波の日から5度目の春がやってきます。岩手、宮城、そして福島…。被災された方々の安らかな日々を願います。しかし、現実は仮説住宅での生活が続き、放射線の影響や、町の経済復興など、心配の種は尽きません。加えて、大切なふるさと、大切な人を失った大きな喪失感を抱えているのです…。その苦しさは、私などの想像をはるかに超えるものでしょう。
 それでも前向きに頑張っている、頑張り続けているその強さに心動かされます。そして人知れず流した涙は、天の国の君を温かく包む衣になると信じています。
 『失ってはじめて知る』という言葉があります。失うことでしか気づかないことがあるとすれば、それは、かけがえのない重い教えであり、亡くなっていった方からの贈り物なのかもしれないと、そんなことを思わされます。   杉浦


【2015年 1月】 年が明けて、『浄土ヶ浜旅館』を再建した若女将、近江智春さんを訪ねました。おいしい海の幸、そして、いつもと変わらぬ花のような笑顔で、こちらが励まされてしまうのです。笑顔でいることで周りのスタッフさんや、自分自身を支えているような気がして胸が熱くなりました。
 いつか、本当に楽な気持ちで笑い合える日が来るまで見守って行きたいと思うのです。
 新撰組ゆかりの『宮古港開港』から400年記念の今年、宮古市では多くのイベントが企画されています。また、あの吉田松陰が東北を旅した際、二戸にも立ち寄っていたのだとか…。
 国の未来を、若者が必死に切り開こうとしていた事実に勇気をもらいつつ、岩手・東北が力強い歩みを進める年になればと思いを新たにしています。   杉浦


【2014年 12月】 今年は、旅がテーマの取材が多かったと思い返しています。東北や岩手を旅してくださる方々の幸せを願いつつ、迎えた師走です。
 オノオレカンバのクラフトが導く思いがけない出会いに、言葉にならない喜びを感じることがあります。個人で、会社から、大切な方への贈り物にと求めていただきます。
 一期一会と簡単に言いますが、命があって出会えるご縁は本当に貴重なものだと感じます。
 11月中旬の早い初雪が物語るように、凍てつく本格的な冬を迎えましたが、人と人とのつながりを胸に、あたたかく過ごしたいものです。   杉浦


【2014年 11月】 自然界に直線は無い…。そんなこと、わかりきっているつもりでした。ところが-。「山、川、木や草花、水平線も実は曲線。そして人の体もね…。だから長い間直線に囲まれているとストレスを感じるらしいよ」。
 震災後、岩手に戻り活躍されている建築家、山下氏の言葉が、思いがけず深く胸に響きました。人間も自然の一部であることを実感する幸せな出会いでした。
 葉が落ち、シンプルな景色を見ているうち、そんなことを思い返しました。安らぎをお届けできる小さな名脇役を目指し、ものづくりを進めていきたいと思います。   杉浦


【2014年 10月】 地元二戸市の事業で、ニューヨークの見本市に参加しました。NYには木製品を長く使い続けるという習慣が無いそうですが、良いものは良いと、「もの」そのものを評価していただいたことが収穫でした。
 5月には当方のターナーがイタリアの「ミラノサローネ2014」に出展されました。「和食」が無形文化遺産に登録されたことを受けて、HugEというファッション雑誌が、和食文化を支えてきた調理道具に注目した企画です。その素材(オノオレカンバ)を活かし、デザイン性と機能性を併せ持つとの視点から選出されました。
 お客様のご意見をしっかり受け止めつつも、自分たちが大切にしているこだわりの部分は、守っていくべきだと学ぶことができました。   杉浦


【2014年 9月】 体験学習の後に、金田一中学校の生徒さんからお礼状が届きました。①良いものを作るには高い集中力が必要なこと。②お客様が喜ぶように相手を思って行動すること。たった2日間でも、とても大切なことを学び取ってくれたようです。
 盛岡みたけ支援学校の生徒さんは、堅い「斧折樺」を一生懸命磨いて、魚のストラップを作りました。今しかないその時を真剣に生きる姿は愛おしく、命の授業をしていただいた思いです。素敵な子供たちとの新しい出会いに、心から感謝しています。
 縄文のうずまき社と東京銀座で開催の、宮沢賢治の物語を題材にした『月夜の賢治』展が好評のうちに閉幕しました。
 月の美しいこの季節。人と自然界のつながりに思いを馳せ、賢治の世界に浸ってみたくなりました。   杉浦


【2014年 6月】~全国のお客様との大切な出会いから~
 神奈川からお食い初めセットを2点ご注文いただきました。大切な方に双子の赤ちゃんが生まれたそうです。小さめに生まれてきた二つの光。斧折樺の強さにあやかって、健やかな成長を願ってのご依頼です。
 人の力には限界があります。でも、その思いが重なりあって、あたたかなひとつの固まりになると感じます。  身近な方の幸せを願って…。未来の子供たちのために、伝統や文化を残したい…。心の底から熱い思いを抱いている方々に出会います。皆さんの思いに触れていると、未来のために、何か大きなことができるのではないかと勇気が湧いてくるのです。   杉浦


【2014年 5月】~全国のお客様との大切な出会いから~
 休日返上で目の前にいる方を懸命に救おうとするうち、いつの間にか自分の限界を超えてしまう…。自分の羽は傷ついても、それでも誰かの幸せを願っている方々との出会いがあります。大切な方へ思いを伝えようと、お買い上げいただくのです。
 「心地よいと感じることが、免疫力を高めるんですよ」そんなお客様からの教えです。プラムのクラフトが、その道具になれたらうれしいです。でも、尊い働きに感謝しつつも、その羽を休めてくださることを願います。
 話題になっている映画「アナと雪の女王」の主題歌の言葉のように「ありのままの自分」を大切にし、誰もが自由な心で羽ばたくことを願わずにはいられません。   杉浦


【2014年 4月】 伝統食の会No.2が、縄文のうずまき舎で行われました。飛び入り参加を含め十数名の小さな集まりで、ひっつみをみんなで作って楽しい会食。小麦文化は本当に身近で、私たちは小麦に育てられたと、雑談に花が咲きました。そして「小麦畑で実を噛んでいると、ガムのようになるのね。それでトンボとかをとって遊んだよ~」と懐かしい思い出が…。口の中でグルテン形成!?子供の遊びにも使われていたことも興味深く、その時代がとてもいとおしく思えました。北の人々のたくましさを改めて思い起こす、貴重な学びの時となりました。
 そんな山の民の憧れは、海産物。その恵みを守ってくださる皆さんの日々に思いを馳せる、4度目の春です。   杉浦


【2014年 3月】 軽米町の瀧村屋さんで「第7回ランチを楽しむ会があり、斧折樺の特徴、暮らしの中でのかかわり、クラフトとしての魅力、プラム工芸の歩みなどをお話させていただく感謝のひと時となりました。
 帰り際声をかけてくださる方があり…。ご主人が闘病中、食事がとれず困っていたところ、姪御さんの紹介で斧折樺の特注スプーンを使いはじめたら、食べられるようになったとのお礼の言葉でした。なるほど、お名前を入れて製作したことを思い出し、うれしい出会いでした。
 斧折樺のクラフトを永くご愛用いただいたり、大切に思ってくださっている方に出会うと、岩手の森が、木々が喜んでくれているように感じます。森の恵みを活かしきる、プラム工芸でありたいものです。   杉浦


【2014年 2月】 ソチオリンピックも感動のうちに閉幕。カーリングではリードを努めた苫米地選手の勇姿。浅田真央選手の涙と笑顔…。選手一人ひとりのそのまっすぐな眼差しから、懸命なその姿から、支えるまわりの方々の想いから、生きることの意味を学んだ思いです。
 メダルがある、無いだけではない。『やりきった』かどうか…。できることは小さくても、いつの日か自分の場所で『やりきった』と思えるような幕のおろし方をしたいものです。
 今年は、地元の学校さんの卒業記念に加え、東京の中学校さんにもご利用いただきます。クラフトを通じ、親御さんや先生方の想いが子供たちに伝わるよう準備します。
 次はパラリンピックの開幕!命の輝きをしっかり見届けます!   杉浦


【2014年 1月】 大切な方との別れや大きな苦しみを経験すると、そこには悲しみだけが存在するように思いがちです。それでも、時間の経過と共に新しい世界が見えてくるような気が致します。それは、悲しみを越えた人にしか見えない、あたたかな人を想う気持ちそのもの…。うまく表現できませんが、与えられた今があることへの感謝でしょうか。
 突然の小保内市長さんとの別れもつらいものでした。でも、あの優しい笑顔で今も私たちを励ましてくれていると感じます。
 市内の高校生が、『モノ作りに興味があり、自分の手に合うペーパーナイフを作ってほしい』というのです。その行動力に感心し、製作することにしました。頼もしい若者たちが育っています!私たちも郷土のために頑張らなくてはなりません!   杉浦


【2013年 12月】 〔お食い初めセット〕のご注文があり、宮古の仮設住宅にお届けしました。応援の気持ちを込め、お名前入りのスプーンを同封しました。
 ところがその方は被災地支援で他県から来られた方だったのです。私の早とちりでお恥ずかしい!
それでも「こんな対応をしてくれる工房のものだったら、大切な友人に安心して贈れます。」と言ってくださり、救われた思いでした。
 12月は温かな心が行き交います。もうひとつの〔お食い初めセット〕は、ドイツのご家族へXmasギフト。〔まごの手〕は、新潟へ快気祝いとして。古希の記念に、〔五角ばしセット〕を東京の方へ。〔ターナーセット〕は、お歳暮として北海道へ…。
 皆様の大切な方へ、お気持ちが届きますようにと祈ります。   杉浦


【2013年 11月】 芸術の秋…。福岡中学校・金田一中学校の文化祭を見に行きました。何十年かぶりです!絵画や書道、職場体験や防災についての学習…。どれも真剣な取り組みが伝わってくる丁寧な仕上がりで、もっとたくさんの方に見て欲しいと思うものでした。
 次は大人の番です。先日、第4回二戸の手仕事展が開催されました。遠方からのお客様に「北の地には細やかな手わざがあってすばらしいですね」とよく言われます。機能美を併せ持つもの作りを目指してはいますが、北のクラフトへの期待を感じ、ドキッとします。勇気と誇りを持って取り組む姿勢を子供たちに手渡せるよう、地元の皆さんと共に頑張らなくてはと思います。   杉浦


【2013年 10月】 今年の「ニコエコ」は10/6、縄文のうずまき舎での開催。100名を超えるお客様で賑わい、お日さまのような笑顔とやわらかな空気で満たされた一日となりました。五角箸の手作り体験にも盛岡や三沢から参加があり、うれしい出会いがありました。
 また17日(木)は十三夜。「山の月をめでる会」が行われ、同舎に30名ほどが集い、台風が去った高い空に「十三番目の月」を楽しみました。代表の栗林さんの『月は影を抱いているんですよ』という言葉が胸に残りました。人の痛みや苦しみを包んでくれるパワーがあるということでしょうか…。美しいピアノの調べと、青みがかった白い光を浴び、自分も詩人になれたような錯覚に酔いつつ帰路に着いたのでした。   杉浦


【2013年 9月】 8月末には、福岡中学校、金田一中学校から合わせて6名が職場体験に。9月には、福岡中学校1年生37名が見学に訪れ、1.変人になろう 2.苦手はチャンス 二つのことを伝えました。込山代表は、誰もやったことのない斧折樺のクラフトを実現するために、変人になった。回りの意見が全てではない。自分で試してみよう!ともう一つは、今苦手なことも単なる経験不足で、実は向いていることがある、ということです。どの生徒も真剣に作業に取り組み、しっかり前を向き説明に聞き入っていて感心しました。
 きっと、自分の命を大切にし、無限の可能性に向かって頑張ってくれることでしょう。私たちもあの澄んだ瞳を思い出しつつ、誠実な仕事をしたいと思います。   杉浦


【2013年 8月】 7月22日、再び「縄文のうずまき舎」を訪ねました。東京に本部がある【月の会】の二戸支部【戸の月の会】結成記念の交流会でした。20名ほどの和やかな会の中で、多くの戦争や災害から復興してきた日本・東北・岩手。どんな時も人々のそばには月の癒し、導きがあったという事実を感じることができました。そして特に東日本大震災からの復興を強く願い、そして二戸のような小さな地域が元気になっていくことを支援したいというお話に勇気が湧きました。
 午後から雨…。「雨だれ、きれいでしょ」と栗林さんに言われはっとしました。雨樋のない大きな屋根からつたう雨だれは絹糸のよう。やさしい雨音に包まれ、母の懐のような安堵感が今も忘れられません。   杉浦


【2013年 7月】 7月7日(日)快晴。“ニコエコ風キッズ”のチャリティウォークでした!参加費は、福島の子供たちのために寄付されます。
 会場は、今話題の"縄文のうずまき舎”と周辺の大自然。大きなスズメバチ!手首ほどの青大将!田んぼを渡る風の波!青空に棒状の虹(環水平アーク)!見事な谷地大滝!そして、カッコいい舎屋(古民家)…。片道40分の道すがら出会った一つ一つが輝きに満ち、『自分は小さな自然の一部である』と気付かされたことが一番の収穫でした。
 代表の栗林さんから「縄文の人々は月の恵を慈しみ、家族愛にあふれ、とても魅力的な暮らしをしていた」と聞きました。進化したと思っていた現代人(私)。しかし、縄文時代から日本人が大切にしてきた、月のリズムに惹かれます。   杉浦


【2013年 6月】 久しぶりに久慈を訪ねました。小袖海岸まではマイカー規制があり、舟渡=ふなどからバスで片道180円。ちょっと面倒だなと思いつつ乗車。しかしバスから見えるその景色は、マイカーから見るそれとは別物の、とても美しく迫力のあるものでした。「あまちゃん」の撮影スポットを楽しみながら、本物の海女ちゃんにウニを剥いてもらい、磯の魅力を満喫!そして圧巻は、高台にある密漁の監視小屋から眺める大海原の深い青。何年かぶりに心が揺さぶられ、改めて久慈っていい所だなーと実感しました。
 北上山系を分布帯とする「斧折樺」は被災地でもある久慈、野田、田野畑、宮古地方の内陸部がふるさとです。海と山の恩恵に感謝しつつ、その大切さや魅力を、岩手を訪れる方々に伝えていきたいと思います。   杉浦


【2013年 5月】 4月の朝、IGRで福祉作業所へ向かう若者たちと一緒になりました。もう少しで「奥中山駅」と思ったら、二人がすっと立ち上がり、八戸から来たらしい行商のおばあさんの大きな荷物を、当然のように手分けし、ゆっくり歩くおばあさんをいたわるようにホームに下りていきました。きっと今日だけでなく、長い間の、あたりまえの光景なのかもしれませんね…。
 さわやかな笑顔の二人、そして善意に感謝するおばあさんの姿がとても自然で、きらきらと輝いて見えました。
 自分のことでいっぱいになっている自分には、忘れられない大切な記憶となりました。また、出会えることを楽しみに…。   杉浦


【2013年 4月】 釜石市甲子町 第6仮説○○ー■■…。
先月に続き2度目のお届けです。『仮設でお世話になった方が、仙台の息子さんのところへ引越しされるので御礼がしたい…』とターナーをご注文いただきました。
 震災で娘さんと妹さんが見つからないままで、心の整理がつかないでいるそうです。そのうえ釜石市は住宅の用地も決まらず、釜石に残りたい気持ちはあっても、だんだん離れていってしまうんです。…と。
 あの日から2年…。でも何も変わらない状況に心が痛いです。
 それでも「前向きに生きられるよう様々な講座に参加し勉強中なの」と話されていました!せめて、頑張っている皆さんの元に特別に美しい桜が咲きますようにと願います。   杉浦


【2013年 3月】 五角箸の修理品に添えられていたお手紙をご紹介します。「15年以上前から、家族で五角箸を愛用しています。生前姑がよく買ってくれました。子供たちも成長し、家を出るとき『このお箸もらっていい?』と尋ねたので、いくらか良さそうなものを持たせました。それから数年…。いつか新しいものをと思っていましたが、今回ネットで見つけて注文することができました!子供たちの喜ぶ顔を見るのが楽しみです。阪神大震災を思い出しながら、岩手の復興を心から願っています。」
 ご家族様の年月と共に五角箸があったこと、感慨深く、感謝の気持ちでいっぱいです。私たちも岩手・東北の復興の形を探りつつ、未来を作っていきたいものです。   杉浦


【2013年 2月】 滋賀県のお客様から「愛用の五角箸を新調したいので、三年ぶりに注文しました。」との電話がありました。聞けば、ご主人は少し手が不自由とのことで、五角箸を気に入ってくださっているのだそうです。
 「四角だと角が当たって収まりが悪いし、丸いと回りすぎて落ち着かない。五角だと、ぴったり決まって安定する。とご主人が言うんですよ。」と奥様が教えてくださいました。
 今や私どもにとって、あたりまえの五角箸ですが、されど五角箸・・・。こうしている今も、どこかで暮らしのパートナーとなっているかもしれないと思うと、嬉しくもあり、責任を感じているところです。   杉浦


【2013年 1月】 昨年、斧折樺のターナーがグッドデザイン賞をいただきました。地元の皆様にささえていただき今日があります。あらためて感謝申し上げます。『斧折樺』は岩手の宝と思っています。他県から二戸に移住された女性が、「二戸のりんごは日本一だと思いますよ!もっと自慢すればいいのに!」と。ある若者は「二戸の自然ってすばらしい!美しい川、山、そして心あたたかな人たちが多く気に入っています。」と話してくれました。
 地元の私よりも二戸の良さを強く感じているその姿に、考えさせられました。思えば子供たちは、学校で地元の良さを学んでいます。私のような大人こそ、学びが必要だと教えていただく機会となりました。   杉浦


【2012年 12月】 あたたかい心で・・・。
 「ニコエコ」第4回は、ぬくもりに包まれ心地良い空間となりました。無農薬、無添加の食品、人や環境にやさしい暮らしに興味をお持ちの方がたくさんおられることに励まされます。
 ひとつ、嬉しい出会いの紹介です!
 福島県郡山市のクラフトのお店「ギャラリー觀」さんと、無塗装でのお取引が始まりました。
 「丁寧に作ってあり、とても評判がいいんです!」と何度も追加発注がありました。『原発のこともあり、商売が難しいんですよ。でも、家族がばらばらになるのがいやで、子供たちと両親も一緒に暮らしています。』と話されていたので、少しでもお役に立てているのなら何よりの喜びと思っています。   杉浦


【2012年 11月】 再会に感謝・・・
 6月に紙面でご紹介した野田村の皆さんが、また五角箸の手作り体験に来てくださいました。前回お届けの際に、無料券を進呈したご縁です。今回製作した五角箸は、支援に来てくれた方に差し上げる予定とのことです。復興への道のりはまだまだ遠く、心が折れそうになる時もあると思います。できることは少なくても、共にありたいと願わずにはいられません。
 斧折樺が結んでくれた縁。斧折樺の持つパワーを信じたいと思います。岩手の、被災地の未来に光あれ・・・。   杉浦


【2012年 10月】 こころを贈る・・・ 
 千葉のお客様に五角箸をの修理品をお届けしたら、『お陰様で司法試験に合格しました。息子の合格を祈って購入したお箸でした。』とお礼のはがきが届きました。
また、『息子の結婚に際しターナーと菜箸を贈ったらとっても喜んでいただいて・・・』とお知らせをいただきました。そして、今月京都の神社で結婚式を挙げるお二人は、列席の皆さんに斧折樺のしゃもじを贈りたいとのことです。どちら様も、大切な人に真心を届けたいのです。斧折樺の持つ魅力を通じ、心をつなぐ役割をさせていただけることを感謝する日々です。   杉浦


【2012年 9月】 二戸市に避難されていたIさん。福島に戻り約11ヶ月ですと久しぶりに連絡があり、元気な声に安心しました。ところが、息子さんが脱水と胃腸炎で入院していたとのこと!しかも「看護士さんが戻っていなくて、遠くの病院に行くしかなかった・・・」と言うのです。「この夏の暑さで、まいってしまったんだと思う・・・」と、心配そうなIさん。
5月の"つぶやき”に剣道を始めたと、Happy Newsを紹介したのですが、まだまだ、日常には程遠い現実であることを実感しました。できることは少ないけれど、この紙面を借りて、二戸からエールを送ろうと思いました!   杉浦


【2012年 8月】 先日、中学1年生30名が工場見学に来てくれました。生徒さんから"私達は、何を心がけれて過ごしたらよいでしょうか。”という質問があり、『今日の暮らしが少しでも心地よくなるよう考え、工夫すること』とお答えしました。
 岩手日報の6/28、7/24に、斧折樺にまつわる話が掲載されていました。一方はソリと箸のこと。一方は舟をこぐ"櫓”についての思い出でした。昔の人は、苦労の中でもその特長を活かし、知恵を絞り、工夫して生活を豊にしてきたことを改めて思います。生徒さんたちの真剣な眼差しに恥じないよう、私も今日の暮らしを見直したいと思います。   杉浦


【2012年 7月】 「五角箸を使ったら、うまく食べられるようになりました!」名古屋からの葉書です。嬉しさで弾むような文面を読むにつれ、思わず歓声があがりました。その方は60代の女性の方で、長い間箸使いに悩んでいたとのことです。ご夫婦での食事の時間が楽しみになったとのお礼状でした。あきらめずに頑張ってみよう!というその姿勢に感服です。
 第三回のニコエコ、遠くは北上からもご来場いただき感謝です。福島支援のために集まった、色付きトレーやペットボトル。小さいことでも、行動することが、忘れないでいることにつながると思いました。   杉浦


【2012年 6月】 野田村で、食育や郷土料理の伝承などの活動をされている20名の皆さんが、五角箸の手づくり体験に来てくださいました。
『斧折樺の五角箸を使っていましたが、津波で流されてしまって…』というお話をうかがい、生活のすべてが変わってしまったことの大変さを改めて考えさせられました。それでも、皆さん明るい表情でした。きっと、色々な思いはありながらも、地域の皆さんのために前に前にと頑張っているのだと感じました!皆さんとつながっていたいと思い、故ゲオルグ神父から頂いた、メープルの苗木をプレゼントしました。   杉浦


【2012年 5月】 福島から二戸に避難されていたIさん。昨年、南相馬市に戻られて、久しぶりにお電話をいただきました!元気な声を聞き、感激でした!
 しかし、うちの中で過ごしているせいか、子供たちの体力が落ちていると、医師から助言があったとのこと・・・。心配です。そこで、剣道(室内でできる!)を始めたところ、少しずつたくましくなっているんだよ!とうれしそうに話していました。
 福島の皆さんは、避難していても、戻られても、終わらない苦しみの中にあること、私もできるだけ覚えていたいと思います。   杉浦


【2012年 4月】 4月14日(土)いわてデスティニーキャンペーンに合わせ、二戸駅のなにゃーとで『北いわてふるさと食堂~二戸や~』が始まりました。
 お母様と娘さんと思われるお二人・・・。斧折樺のスプーンをしきりと見ています。「おじやとか何でも食べれるスプーンが欲しいんよ…けど、高いなあ…。毎日使うから、安いんでいいん。」とお母様。すると娘さん、「毎日やから、いい物を使うんよ!わたしは、普段使いにいい物使こうてるよ!」と。
 娘さんの言葉に、改めて日常こそ大切にしなくてはと考えさせられました。聞けば、お母様は90歳とのこと。北の国の旅が、お二人の良い時間になりますようにと祈るばかりです。   杉浦


【2012年 3月】 ”原発の無い明日をつくろう!!アクション in にのへ”という催しが行われました。福島の現状を伝えるDVDの上映会です。私たちも、子供たちの未来のために行動を起こした実行委員会の皆さんの活動に賛同しました。
 福島、日本そのもの、そして地球そのもの…。そして私自身であると思うのです。未来のために進むべき道をしっかりとらえ歩みたいものです。今を生きる大人として…。   杉浦


【2012年 2月】 1月末、静岡から”まごの手”が届きました。磨り減ったとのことで、修理のご依頼です。「新しく購入したくても、取扱店がわからずあきめていました。今回ネットでやっと見つけたんですよ!」と。新しい物を、ご主人のお誕生日に送られるとのことです。そして30年もの間、お客様のもとで働かせていただいた”まごの手”は、感謝しつつお手入れして同封しました。
 ひとつの物を大事にされるお客様から、反省する機会を得ました。私も作り手のことを思って暮らそうと・・・。   杉浦


【2012年 1月】 “いのち”について、様々な場面で想うことがあります。茨城在住のご夫婦が工房まで来られ、「傘寿と古希の記念に、斧折樺のスプーンを100組ほしい」とのこと…。
 ご愛用の斧折樺のスプーンを取り出し、「どうせなら、気に入っているものをあげたいし、昔、仕事で石切所(二戸市)に居たことがあって、懐かしくて…」と話されました。電話で済むことなのに、わざわざ来られたなんて…!二戸の人間として、なんともうれしい瞬間でした。また、お客様から、生きることの教えをいただきました。   杉浦


【2011年 12月】 先日、2回目の『ニコエコ』が行われました。ちいさな催しですが、心がぽっとあたたかくなるので不思議です。そんな中でのエピソード。小学生の女の子が、五角箸の手作り体験に参加してくれました。「プレゼントするの…」と、長い箸を一生懸命磨きました。「冬休みに、東京で単身赴任のパパにあげるのが楽しみです!」お母さんと娘さんのキラキラした笑顔に、寒さを忘れるすてきな時間でした。   杉浦

【2011年 11月】 9月の敬老の日を前に、まごの手の贈物のご注文がありました。『ずーっと元気でいてね!美結(仮名)』とメッセージ入りのご希望でした。
「初めての敬老の日なので、特別な日なんです!」
よくお話を伺うと、美結さんはまだ生まれたばかりの赤ちゃん。可愛いお孫さんからの、初めてのプレゼントを、ご両親が演出されたのです。ご家族の絆をつなぐお手伝いをさせていただき、幸せな気持ちになりました。   杉浦


【2011年 10月】 『ステンレスのスプーンとフォーク、全部捨ててしまったんです!』雪に覆われた本年2月、福島の女性からお電話をいただきました。ご主人も定年を迎え、二人で気に入ったのものに囲まれて暮らしたいとのお話でした。当方の品とは気付かずに、20年の間に3点、色々な会場で買い求めご愛用とのこと。”長年使っても変わらない『斧折樺』で揃えたい・・・”
8月にやっとお届けすることができました。福島が元気になる日が私たちの復興の日。福島とともにありたいと・・・。   杉浦


【2011年 9月】 『五角箸をお中元に使いたいのですが…』と1本のお電話が。室蘭の鉄鋼会社からでした。震災の影響をご心配いただき、『復興の願いを込めて、岩手のいいものを贈りたい』とのご意向を伺い、その想いに胸が熱くなりました。当方の『斧折樺』は、主に宮古地区の高台から届きます。私どもにとっては、まとまった数で大変でしたが、復興を願い、スタッフ総出で用意させていただきました。
 たくさんの人が心を痛め、そして応援してくださっていることを改めて感じ、気のひきしまる思いがしました。   杉浦


【2011年 8月】 『前から使っていたものと同じスプーンが欲しくて…』と、お客様…。雫石のショップに無かったとのことで、日を置いて工房にご来店いただきました。しかも、宮古市から…。
 『あった!これこれ!』と、「れんげスプーン」を大事そうに手にし『今回は兄夫婦に…』『こちらに来るとほっとします。何げない日常が嬉しい』と話されていました。少しでも安らかな気持ちになっていただけたら幸いです。沿岸地区の一日も早い復興の思いを強くした出来事でした。   杉浦


【2011年 7月】 アメリカ在住のお客様から、スプーンと五角箸の修理の依頼がありました。愛着があるので、大切に使い続けたいとのご意向でした。
『震災後、仲間でガレージセールを開き、義援金を送り続けています』とのメッセージとともに…。さらに、”スプーンや箸を褒められます。
良いものはアメリカの方もわかってくれます”とも…。
 お客様から元気をいただいておりますこと、心から感謝し、誇りを持って、岩手、日本のモノ作りに励みたいと思います。   杉浦


【2011年 6月】『ひめくり』。盛岡の紺屋町に昨年オープンした岩手ゆかりの作家のクラフトを扱うお店です。
3月末の計画していた展示会は、急遽チャリティーとして開催。多くの方にご理解、ご協力いただき、被災した作家仲間に支援金を届けることができました。
 ”斧折樺”を含む広葉樹は、三陸内陸部の豊な森に清らかな水を湛え、川となり、リアスの海の恵を支えています。
 美しく強いこの木の別名は”梓”。この木を使った“梓弓”に想いを託した先人に倣い、心を込め作品をお届けしていきます。
   杉浦


【2011年 5月】 北上山系を分布帯とする”斧折樺”との付き合いも、早30年…。当時は、あまりにも堅すぎて、加工には向かないとされていました。
 それでも三陸沿岸では、水に沈むほどの重さ、堅さを生かし、舟を漕ぐ『櫓(ろ)』やカキなどの養殖に
最適とされ大切に扱われていたのです。二戸でも、焼き麩を巻く心棒に、使われていたことをご存知でしょうか。
 三陸のかわいた風を受け、千年のときを経て立ち続ける”斧折樺”は、岩手の風土、やさしいけれど我慢強い岩手の人々の象徴のようにさえ思えてくるのです。   杉浦


【2011年 4月】 仙台市の『ギャラリー杜間道(とうげんどう)』さんは、4/17”売り上げのすべてを義援金とする企画展”を
もって販売を再開しました。オーナー自身も被災しているにもかかわらず・・・。
 その気持ちに動かされ、私たちも、製品を無償で提供させていただきました。
できることは少ないかもしれませんがアンテナをめぐらし、支え合っていけたらと心から願っております。   杉浦